「ひとり多ずもう」は、ひとり芝居のショーケース公演。
-素舞台
-ひとり15分-俳優×演出家による台本
という3つのルールの下、俳優と演出家がペアになり、1対1の創作に臨みます。 監修の松井周さん(サンプル)のWSよりスタートし、それぞれの個性を活かしながら、この企画でしかできない作品づくりを行います。 同じ手法から生まれた多様なひとり芝居を上演します。 自作自演も含め6作品の上演を予定しています。
本公演の監修を務める松井周さん(サンプル)にインタビューを行いました。前編と後編に分けてお届けします。前編では主に、「ひとり多ずもう」という企画の特色について、後編では松井さんの考える一人芝居の魅力について語っていただきました。
―「ひとり多ずもう」の企画名の由来を教えてください。
僕が2016年くらいに「ひとりずもう」っていうサンプルの俳優たちとひとり芝居の公演を2回ほどやったことがあったんですね。これはすごい面白いぞと思ったので、今「ひとり多ずもう」の運営をやってる人たちに、こういうことやってみたらどうですかって進めてみたんです。
ひとり芝居っていうのは、俳優にとってすごく自分を試される場で、ある意味格闘技みたいだなって思う。全部一人でやるから、自分のやっていることを共演者に頼れない。ここはどこなのか、自分が誰なのかをイメージして、それがお客さんにどう見えるかっていうのを常に考えなきゃいけない。で、お客さんからすると、今舞台上で一人でわーわーやってる人は一体何をしてるんだろうって想像せざるを得ない。だから一人芝居ってお客さんもすごく想像して舞台を作ってるし、もちろん俳優も俳優で大変だし。シンプルなんだけど、結構厳しい場所だよなあって思います。
それから、「独り相撲」っていう言葉には、自分だけでどんどん暴走して行動していったけど結局片想いでしたみたいな、マイナスのイメージがありますよね。けど演劇に置き換えると、それはすごく一生懸命思いを伝えようとして頑張っている様にも見えるし、あるいは滑稽にも見える。でも、だからこそ面白いっていうか。その様子が誰かに伝わったら報われるかもしれないとも思う。
―「ひとり多ずもう」は俳優の力が試される、ということですが、逆に俳優が楽しめるポイントはありますか?
いろんな楽しみ方があると思いますよ。まずすごいのはね、演出家・劇作家で若手の注目株の人に直接交渉して、「わたしと共作しませんか」俳優からアクションを起こしたっていうこと。俳優のモチベーションも高いってことだし、作家が書いてきた言葉は自分のためだけの言葉だし、こんなにいい環境はないと思う。俳優にとってすごく勉強になるだろうな。自分は素材でもあって、パフォーマーでもある。ものづくりの原点だよね。まあその分、やっぱり厳しくもあるとは思ってて、自分しか見られるものがないので全部を晒されるというのはある種プレッシャーもあるだろうし。楽しさと厳しさとありますね。
―演出家・劇作家が試されるところはなんですか?
普通は演劇を作るときには、俳優がたくさんいてセットが合って音楽があってって自分のフィールドでできると思うんですけど、今回のひとり多ずもうでは15分で、ほとんど素舞台で、俳優も一人。そういった制約の中で俳優が持ってくるものを演出家がどう料理するかっていうのはそれぞれ違うだろうし、そこに味が出るんじゃないかなと思っています。
―普通のお芝居と「ひとり多ずもう」とでは、演出家・劇作家と俳優の関係性はどのように変化するとお考えですか?
それはペアごとに変わるんじゃないですかね。でも、頼りになるのは自分と俳優だけなので、俳優の引き出しをちゃんと開けることと、演出家・劇作家の世界を作ることを両立させるためにはやっぱり、俳優に対して自分の言葉をきちんと届けなきゃいけない。僕は共犯者だなあと思います。どういう企みをお客さんに見せるか。俳優がどう見えるかっていうのは結局劇作家が書いたものだったり演出の手腕によるものでもあるので。
―松井さんは「ひとり多ずもう」の監修をされるとのことですが、どういったスタンスで企画や創作に関わっていくのでしょうか?
あんまり関わろうとは思ってないんです。監修っていう立場として居たいなって。けど、僕が一番見たいなと思うのは、戯曲に書かれた言葉でも演出でも、俳優そのものでもなくて、作品中で流れる豊かな時間なんです。どういうことかっていうと、お客さんが想像する時間が生まれて欲しいなっていうことなんです。僕はそれが一人芝居の醍醐味だと思っているので。
後編はこちら。
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