【後編】「ひとり多ずもうvol.1」 松井周 インタビュー

「ひとり多ずもう」は、ひとり芝居のショーケース公演。
-素舞台
-ひとり15分

-俳優×演出家による台本

という3つのルールの下、俳優と演出家がペアになり、1対1の創作に臨みます。 監修の松井周さん(サンプル)のWSよりスタートし、それぞれの個性を活かしながら、この企画でしかできない作品づくりを行います。 同じ手法から生まれた多様なひとり芝居を上演します。 自作自演も含め6作品の上演を予定しています。


本公演の監修を務める松井周さん(サンプル)にインタビューを行いました。前編と後編に分けてお届けします。前編では主に、「ひとり多ずもう」という企画の特色について、後編では松井さんの考える一人芝居の魅力について語っていただきました。


―一人芝居を書こうと思ったきっかけは何かありますか?


僕は青年団の俳優なんですけど、宴会芸を一つ持てって言われてて。それで宴会芸として一人芝居をやったことがあったんですよ。けどね、大失敗。でもこれは可能性があるなと思ってどんどん話を書いてったんです。最初すごく失敗したのは、一人で頑張っちゃおうとしたからだと思うんです。そうじゃなくて、お客さんに想像してもらえばいいんだって。


―なぜ一人芝居に可能性を感じたのでしょうか?


やっぱり、俳優がコンテンツを持った方がいいっていうのはずっと思ってることなので。日常の自分を観察することも俳優の仕事じゃないですか。今わたしこういう行動をしたとか、次の時すげームカついてついこうしちゃったとか。その観察を芝居にすることは可能なんじゃないかなっていうふうに思ったんですよね。何かを作ることはそんなに敷居は高くないと思うんですよ。例えば誰かの家で「あいつの真似」って言って友達のモノマネ始めたらそれはもう演劇です。だったらやればいいじゃんってことですよね。


―松井さんが考える、一人芝居の魅力を教えてください。


埋もれてる時間っていうのがあると思うんですね。例えば、休憩室でスマホを見ているときとか、ご飯を食べているときとか、適当な会話をしてるときとか、あるいは他の人から見ると何をしてるんだかよく分からないけれど、その人にとってはすごく切実な、楽しいことをしてるときとか。どうしても、そこではその人は主人公ではないなっていう時間。その埋もれてる時間をなんとかしてくり抜いて舞台にのせたい。そのためには、主人公を設定するんじゃなくて、周りの景色をや人を消すことで、何気無い時間が引き立つようにできるんじゃないかと思ったんですよ。その人がどういう反応をしてるかを見るだけで、この人の外側はこういう環境なんだな、こういう人がいるんだなっていうことは想像できるし。


―俳優は主人公ではないんですね。


僕のイメージではね。できるだけ主人公っぽいミッションは与えられない方がいいんじゃないかなと思っています。日常のある一コマでいいかな。


―各ペアに、これからの創作で心がけて欲しいことは何かありますか?


基本的には好き勝手に作って欲しいですが、欠けてるっていうことをうまく利用して欲しいなとは思っていますね。なのでフィードバックワークショップの時は足していくより削っていくことを意識してコメントしてます。削った場所、つまり欠けているところをお客さんが気になるっていうふうになったらいいなって。会話って2人いないとできないから、一人芝居っていうのはそもそも一人欠けてるんですね。でも、色々なことが欠けてるってことをお客さんが楽しめればって僕は思う。

それと、普段自分が作っているものとは違うものであっても、楽しみを見つけてほしい。欠けてるっていうことを面白がるのは僕の楽しみで、もしかしたら一人芝居には違う楽しみがあるかもしれないですよね。それを掴んで見せてくれたら面白いなって思う。


―「ひとり多ずもう」という企画が、今後どんな広がりを見せていったら面白いと思いますか?


サプライズがどんどん起きてほしい。組んだことのないような俳優と演出家が組んで、そんなちっぽけなことを演劇にするのかよ!みたいな。有名無名関係なく、いろんな人の遊び場になったらと思いますね。

一人でやるっていうことはあんまり変えたくないかな。一人でやるっていうことがすでにちょっと無茶だと思うんですよね。その無茶振りに対して、こうでもないああでもないっていう風に一緒に作っていってほしい。たまには僕もやってみたいなって思うし。


―俳優としてですか?


そうですね。全然違う演出家の人にやってもらったりとかして。演出家としてもまたやってみたいな。


―松井さんが考える「ひとり多ずもう」の楽しみ方を教えてください。


いろんなことを想像して欲しい。俳優がそこにいて、何にもない場所で、ある嘘をついてシーンを作り上げようとしてる。そのある種無様な姿を、その嘘をどう楽しむかですよね。ショーケース公演だから、全然知らない俳優・演出家・劇作家を知る交流の始まりの場みたいになれたら。色々な人が同じ縛りの中でそれぞれの演出・戯曲を試す、演技ってなんだろうって考えさせられる研究の場にもなると思う。


前編はこちら

公演詳細はこちら!

松井周 プロフィール
1972年生東京都出身。1996年劇団「青年団」に俳優として入団後、作家・演出家としても活動を開始する。2007年『カロリーの消費』より劇団「サンプル」を旗揚げ、青年団から独立。2011年『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞。2016年『離陸』で2016
Kuandu Arts Festival(台湾)に、2018年『自慢の息子』でフェスティバル・ドートンヌ・パリ(仏)に参加、2019年KAAT神奈川芸術劇場『ビビを見た!』の上演台本・演出を控える。

「ひとり多ずもう」公式ブログ

-素舞台 -ひとり15分 -俳優×演出家による台本 という3つのルールのもと、俳優と演出家がペアになり、1対1の創作にのぞみます。 監修の松井周さん(サンプル)のWSからスタートしたこの企画を発展させて、俳優と演出家の対話からうまれる作品づくりを行います。自作自演も含め6作品の上演を予定しています。公演詳細はこちら→https://ticket.corich.jp/apply/98354/

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